遺産分割協議
父が亡くなって、しばらくした後に「計理士さん」と母が呼んでいた人が訪ねてきました。
父の兄弟も集まって、わたしと妹以外の親族で何やら会議です。
後に、これが「遺産分割協議」だったとわかりましたが、そのときは何かわかりませんでした。
わたしは、すでに30歳、妹は23歳になっていましたが、法律とかそういうことには縁がなかったので、この協議が無効になり得るものであることもわかりませんでした。
財産はすべて兄と母に
その人が訪ねてきてからしばらく時間が経ち、わたしたちのいる部屋にやってきて「こことここに実印を」とだけ言い、いろいろ書かれた書面を渡されました。
中身に目を通せとは言われなかったし、借金の保証などではなさそうだったので、それだけを確認してハンコをつきました。
その2年後、会社を継いだ兄が会社をたたむことを決めました。父の兄が実質的に指図する状態で、その伯父に言われるがままにお金は我が家から持ち出し、父の保険金も葬式のときの香典も、父の死後、わりとすぐに伯父に命じられ、会社に使いました。
会社の経理を手伝っていた母の給料は、ブーメランで消えていき、手元にはお金が残っていません。会社の負債は30億円超。家も土地も銀行の担保に入っていましたし、競売にかけると予告も受けました。
母もグループ会社の代表だったので、兄と一緒に破産することにしました。
死後2年過ぎて遺産放棄の手続
わたしと妹は、遺産分割協議書で相続財産なしとなっていたはずですが、その書面が手元にないため、銀行から万が一なんか言われたときに証明できるものがありません。
そこで、本当のところ必要かどうかわかりませんでしたが、念のために相続の放棄ができないかと考えました。
このころには、法律を勉強しはじめ、司法試験を受けていました。あと3点で択一が受かるところまでこぎつけました。ほかに自慢することがないので、ここで自慢しておきます。とはいえ、これがピークで、翌年大きく引き離されたのであきらめたのですが・・・。
で、相続発生後2年が過ぎてますが、家庭裁判所に申立書を送ってみました。
記憶は定かではないですが、たぶん兄から遺産分割協議書を借りて提出したような気がします。
裁判所ともやり取りをしたか覚えてませんが、妹とわたしの相続放棄の受理書が届きました。
遺産分割協議書の内容から、わたしも妹も相続分がゼロであることと、会社が倒産することで連帯保証人の父の負債が30億円超となること、ほかにどこかからお金を借りていないとも限らないことを理由に書いたことが伝わったのだと思います。
裁判所様、ありがとう。
相続放棄は原則3カ月以内
民法ではそのように書かれています。3か月って、短いですよね。
死んだわ、お葬式終わったわ、49日やわ、納骨やわ・・・であっという間に時間が過ぎて、気づけばあとひと月あまりで3か月です。
はっきりと、プラスの遺産よりマイナスの遺産が多いとわかっていれば放棄に踏み切るかどうかも簡単に決められますが、そうではない場合、マイナスの遺産について探さなければなりません。
郵便物とか借用書とか見つかればいいですが、たいてはその3か月が過ぎてから督促状などが届くと聞いたことがあります。
そんなのあんまりだ~~!!
そう考えると、借金の情報って遺族にとってはものすご~~~く大事だということがわかります。
遺言書は縁起悪い??
遺言書でもエンディングノートでもいいですが、そんな借金に関する情報は、恥ずかしがらずにどこかに書いておくのがいいですね。体感しましたので、切実に希望します。
遺言書なんて聞くと「縁起悪い」と顔をしかめる人もまだまだいるようですが、そんなプライド(?)のせいであとあと困るのは家族。
家族のためを思うなら、書いておきましょう。